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見たことの無い場所だった。どこか……森の中のような。
少し、霧が出ている。
ほの白く沈む世界の中、私は低い木立の影に隠れていた。
――遠くから、かすかに声が聞こえる。私は耳を澄ました。
「……ちゃん、……ご飯……」
よく聴き取れない。優しくて、どこか懐かしい声。
私はどうして隠れているんだろう。
猫ひろしはどこへ行ったの? まったく、手のかかる役立たず。
枝を少し掻き分けて、声のする方を伺う。
「はーいっ」
今度ははっきり聴こえた。明るくてよく通る声。一点の曇りも無い声。
少しずつ、霧が晴れてきた。
少し離れた野営地に、ふたつの人影が見える。
二人の間にあるのは……よく見えない。お鍋なのかな。
もうちょっと…と思った瞬間、木立が揺れて音を立てた。
こちらに背中を向けていた女の人が振り返る。
「どうしたの? …………」
「……ううん、何でもない」
乳白色の帳が私の視界を遮って、そのまま現実世界へと引き戻した。
「にゃぁ?」
体を起こすと、黒猫が私の顔を見上げて首を傾げていた。
「……なんだ、お前か。こんなところにいたのね。探したわよ」
嘘だけど。
夢の中にまでこの縁起悪い猫に出てきて欲しいわけがないじゃない。
「蜂はどこへ行ったのよ、蜂は。ご飯食べて出かけるわよっ。」
こんな、嫌でも独りを感じさせられる遺跡の外なんて嫌い。
早く逃げ出したい……あんな夢を見た後ならなおのこと。
見知らぬ二人に、夢の中の出来事なのに、ちょっと嫉妬してしまった。
少し、霧が出ている。
ほの白く沈む世界の中、私は低い木立の影に隠れていた。
――遠くから、かすかに声が聞こえる。私は耳を澄ました。
「……ちゃん、……ご飯……」
よく聴き取れない。優しくて、どこか懐かしい声。
私はどうして隠れているんだろう。
猫ひろしはどこへ行ったの? まったく、手のかかる役立たず。
枝を少し掻き分けて、声のする方を伺う。
「はーいっ」
今度ははっきり聴こえた。明るくてよく通る声。一点の曇りも無い声。
少しずつ、霧が晴れてきた。
少し離れた野営地に、ふたつの人影が見える。
二人の間にあるのは……よく見えない。お鍋なのかな。
もうちょっと…と思った瞬間、木立が揺れて音を立てた。
こちらに背中を向けていた女の人が振り返る。
「どうしたの? …………」
「……ううん、何でもない」
乳白色の帳が私の視界を遮って、そのまま現実世界へと引き戻した。
「にゃぁ?」
体を起こすと、黒猫が私の顔を見上げて首を傾げていた。
「……なんだ、お前か。こんなところにいたのね。探したわよ」
嘘だけど。
夢の中にまでこの縁起悪い猫に出てきて欲しいわけがないじゃない。
「蜂はどこへ行ったのよ、蜂は。ご飯食べて出かけるわよっ。」
こんな、嫌でも独りを感じさせられる遺跡の外なんて嫌い。
早く逃げ出したい……あんな夢を見た後ならなおのこと。
見知らぬ二人に、夢の中の出来事なのに、ちょっと嫉妬してしまった。
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